DVD『お伊勢さん』を通して伊勢神宮の行事や歴史を学んでいます。今回は特典映像「遷宮のお祭り」を紹介します。
平成25年(2013年)に行われた第62回式年遷宮は平成17年(2005年)の山口祭に始まり、諸々のお祭りと行事を重ねて終えました。
このDVDでは5分ほどの短い映像を通じて地元の神領民をはじめ、多くの人々の協力と願いによって遷宮が成り立っていることが分かります。伊勢神宮に興味を持つ方はぜひ参考にしてください。
遷宮のお祭り
山口祭
山口祭は第62回式年遷宮の山口祭は2005年(平成17年)5月2日に行われました。
五色の幣をもった小工を先頭にして神職が参進
忌鍬、忌鎌の儀式、物忌の童女が忌鍬を神職に渡します
神職は忌鍬でもって山を鎮めます
式年遷宮に際して最初に行なわれるお祭で、新社殿の用材を切り出す前山の神に安全と立入りの許可を祈願します。
伊勢神宮では材木のことを御用材、材木を伐採する山を御杣山と呼びます。現在の御杣山は伊勢にありませんが、古例に従い内宮は神路山、外宮は高倉山で行われました。
木本祭
木本祭は正宮の心御柱となる御用材の伐採に際して、その木の神を祀る儀式です。
深夜、闇の中で祭事が行われています
秘儀とされており詳細は不明です
心御柱とは神宮の正殿の床下中央にある特別な柱、大きさや形などの詳細はわかりません。
山口祭 が行われた5月2日の真夜中に行われました。秘儀とされており奉仕者も禰宜や大物忌などに限られます。
御杣始祭
6月3日に長野県木曽谷で行われました。
2本の御神木の前で神職が斧を振りおろします
3名の杣夫が3方から木の幹に斧を入れています
隣の木でも同じことが行われ、御神木は刈り倒されました
内宮と外宮では御神体を器に納めます。御杣始祭ではこの器をつくる御神木を伐採します。
内宮と外宮用に2本の御神木が必要です。御神木は育った場所や周囲の環境、材質、大きさに厳しい条件があります。
さらに切り倒したときに2本の木の先端が交差しなければなりません。今回は木曽谷上松町の樹齢約300年の2本の檜が選ばれました。
御神木は三ツ緒伐りとう技法で伐り倒されます。
- 木の三方から斧を入れる
- 支点を3カ所残す
- 最後に倒す方向と反対側の支点に斧を入れて刈り倒す
御神木を傷めずに切り倒す古くから伝わる技法です。御神木の木片はお守りになると伝えられてます。
御樋代木奉曳式
御樋代木奉曳式は御神木を内宮と外宮に迎える行事、内宮は6月9日、外宮では6月10日に行われました。
川の中を曳かれる御神木
黒い法被と編み笠をかぶった大勢の人たちが御神木を曳いています
陸路では白い法被と鉢巻き姿の人たちが御神木を曳きます
伐採された御神木の断面は16紋の菊形
御神木には注連縄と鳥居、榊が飾りつけられています
神宮に入ると御神木は奉曳車に乗せられます
伊勢までは陸送され、御神木が立ち寄る地域では神事や祭礼が催されます。
御神木は内宮では五十鈴川を遡り、風日祈宮橋の辺りで神域へ曳きあげられます。外宮では北御門から神域へ曳きこまれました。
御船代祭
御船代とは御神体を納めた御樋代を入れる器、御船代祭はこの器の用材伐採にあたり神様を祀ります。
唐櫃を担いで橋を渡る神職
八度拝八開手という拝礼法
神職が立ったり、座ったりを繰り返します
衣装を纏った物忌の童男が登場
内宮、外宮と並行して木曽の御杣山で伐採の行事が行われました。物忌として内宮では童男、外宮では童女が奉仕、忌鍬と忌鎌を捧げ持って作業の安全を神に祈願します。
木造始祭
木造始祭は造営にあたり作業の安全を祈願するお祭りです。2006年(平成18年)4月21日に行われました。
神職が御用材に斧を打ち込む
御神木の横で八度拝八開手で拝礼します
内宮と外宮の正宮に続いて、他の社でも祭りが執り行われます。木造始祭がすむと遷宮の造営作業が本格化します。
お木曳
式年遷宮で用いる御用材の運搬を木曳といいます。
地元の人たちがで橇と奉曳車で御用材を曳いています
内宮用は五十鈴川を遡って神域へ川曳、外宮用は奉曳車で陸曳されます。
仮御樋代木伐採式
遷御の際に御神体は仮御樋代に納め、仮御樋代は仮御船代に納められます。
檜の根元に作られた足場で、3人の杣夫が斧で木を切っています
この御用材の伐採にあたり、木の本の神を祀るために忌斧を入れる祭儀です。木の本に座す神を祀り、古式に従って三ツ緒伐りで御用材を伐採します。5月17日に行われました。
鎮地祭
新しい社殿の造営地で新宮の大宮地の神を祀る儀式、地鎮祭にあたります。4月25日に行われました
緑色の衣装を着た女の子が鎌を持って登場
童女は社の前で正座して鎌をかかげます
物忌の童女は鎌をふりあげて草刈り初めの儀式を行います。
宇治橋渡始式
次の20年の無事を願い新しい蔓度麻を擬宝珠に納めます。
捧げられた神饌の前で神職が参拝
神職が蔓度麻を納めます
青い装束をまとった小工が擬宝珠を設置
宇治橋の完成です
擬宝珠は作り直さず繰り返し使われます。2009年(平成21年)11月3日に行われました。
続いて渡り始めが行われました。三世代の夫婦が渡始めをするのが慣わし、先頭は渡女と呼ばれる高齢の女性、後ろに渡女の旦那さん、子供夫婦と孫夫婦の三世代が続きます。
立柱祭
新正殿の造営で最初に行われる行事、新正殿の御柱の木口を木槌で打ち固めて新殿の安泰を祈ります。
大宮司を先頭に神職が参進
青い衣装の小工が木槌で柱を打ち固めます
内宮は2012年(平成24年)3月4日、外宮は3月6日に行われました。一般には非公開です。
上棟祭
建物の守り神である屋船大神を祀り、正殿の安泰を祈願します。
新しいお宮の屋根の上で小工が木槌を叩いています
屋根から2本の白い布綱が張られました
一般の棟上げ式にあたります。
第62回式年遷宮に先立ち8年前から遷宮の成就を祈願するお祭りが重ねられてきました。地元の神領民をはじめ、多くの人々の協力と願いによって遷宮は成り立っています。