DVD『お伊勢さん』を通して伊勢神宮の式年遷宮や歴史を学んでいます。
今回はDVDの特典映像「宇治橋の架け替え」を紹介します。10ヶ月におよぶ宇治橋の架け替え作業が13分間の映像にまとめられています。
目次
宇治橋の架け替え
五十鈴川に架かる宇治橋は日常から神聖な世界への入り口です。
全長102m、橋幅8.4mの檜造り、日本最大級の和橋です。20年ごとに架け替えますが、その間およそ1億もの人々が渡ることで檜で出来た敷板は5cm程すり減ります。
新しい宇治橋は式年遷宮の4年前に完成します。
1949年に予定された第59回式年遷宮は太平洋戦争の影響で4年後に延期されましたが、この時宇治橋だけは予定通りに架け直されました。このため宇治橋だけは4年早く遷宮の儀式を迎えることになりました。
蔓度麻奉下式
平成21年2月に橋の擬宝珠が外されました。神職が擬宝珠の中から蔓度麻を取り出します。蔓度麻は宇治橋の安全を祈願して納められたお札です。
宇治橋には16基の擬宝珠があります。西詰北側の2本目の擬宝珠に蔓度麻は納められています。入り口の鳥居から見ると左側の手前から2番目の擬宝珠です。
多くの参拝者がご利益を願ってこの擬宝珠に触れるため、この擬宝珠だけピカピカしていました。
宇治橋は右側通行なので内宮を参拝した後でないとこの擬宝珠には触れられません。
橋の架け替え
DVDでは平成21年2月の雪の降る日に古い宇治橋が取り壊されました。
宇治橋の下流に仮橋が架けられます。仮橋は全長63m、橋幅5mで橋桁は鉄骨製、欄干は木製で11カ月間使われます。
平成21年3月から橋の造営が始まりました。宮大工と船大工がチームを組んで作業にあたります。架け替え工事は熟練の宮大工を中心に行われます。加工した木材を慎重に組み合わせていきます。
平成21年6月に船大工が橋の敷板を敷き始めました。木造船の船底を造る技法を用いて複雑に刻まれた木材を組み立てていきます。敷板は616枚、摺り合わせと木殺しという技法で敷板を隙間なく敷き詰めます。
船大工が敷板を敷く間、宮大工は工作所で欄干を作ります。ノミと鉋を使って作業は進んでいきます。
平成21年9月に宮大工が欄干を据え付けました。全てが手作業、多くの大工が携わり失敗の許されない工程が続きます。
大鳥居には内宮と外宮の正殿の棟持柱が使われます。宇治橋として20年間使われた後、内側の鳥居は亀山の「関の東追分」、外側の鳥居は桑名の「七里の渡し」の鳥居に作り替えられます。
宇治橋渡始式
平成21年10月に次の20年の無事を願い、新しい蔓度麻が擬宝珠に納められました。青い素襖という装束を纏った橋工が擬宝珠を据え付けています。擬宝珠は作り直さずに繰り返し使われます。
この擬宝珠には「天照皇太神宮 御裳濯川御橋 元和五己未年三月」と刻印されています。
渡り始めは三世代の夫婦が渡るのが慣わし、先頭は渡女と呼ばれる高齢の女性、後ろに渡女の旦那さん、子供夫婦と孫夫婦の三世代が続きます。こうして宇治橋の新たな20年が始まりました。
古い様式の橋を昔ながらの技法で現代人が作り変えることで古代の建築技術が継承され、新しく変わらない宇治橋が完成しました。
建築物を変わらぬ姿で作り直して新しい生命を吹きこむ、このことを通じて神と人、そして国家の永遠を古の人々は目指したのです。